株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティ
八王子ケアコミュニティそよ風 施設長寺田亜紀子
寺田亜紀子(てらだあきこ) 社会福祉法人での介護主任を経て、2003年、メデカジャパン(現ユニマット リタイアメント・コミュニティ)入社。2010年より現職。花火大会や餅つき、認知症について知っていただくための健康教室など、地元に根ざした施設をめざして様々なイベントにも力を入れている。
寺田はいつも御守りをひとつ、ポケットに忍ばせている。その小さな御守りは、時に心のよりどころとなり、時に自分自身を律してくれる大きな存在だ。
「以前勤めていた施設のお客様から頂いたんです」
彼から言われた言葉が忘れられない。
「僕はかごの中の鳥のような気持ちで寂しかった。でもあなたが入ってきて雰囲気が少し変わったんだ。だからもっとこの環境をよくしてほしい。あなただったらできる。大変なこともあるだろうけども頑張って」
うれしくて懸命に働いた。寺田が転職し、施設を去った後、そのお客様は亡くなった。
2004年、八王子ケアコミュニティそよ風が誕生したと同時に寺田は、パートとして働き始めた。管理職だった前職からの転進を決めたのは、「現場でお客様とじっくり向き合いながら仕事をしてみたい」と思ったから。2歳の子供を持つ母親であることも考慮しての選択だった。ところが介護の現場は寺田を自由にはしてくれなかった。
「施設のオープニングスタッフに十分な経験者がほとんどいなかったので、介護とは何かを他のスタッフに教える役割を任されたんです。お客様に迷惑をかけられないし、新人職員を放っておけないから、みんなが慣れるまではパートとはいえ出勤回数を増やして手伝おうと決めました」
21歳から介護の仕事を続けている寺田には、自ずと役職以上の期待がかかる。1年も経たないうちに常勤に近い仕事量を抱えるようになり、契約社員を経て正社員となっていた。
「はじめは介護の仕事を楽しみながら続けたいと思っていたのですが、立場が変わると意識の持ち方が変わりますよね。他のスタッフのフォローもしなければ、とか、悩んでいる人がいたら積極的に力になりたい、という気持ちが強くなりました」
施設と共に成長し、やがて施設長の重責を背負うこととなり、今に至る。
「八王子ケアコミュニティそよ風には複数のサービスがあります。各事業部門がバラバラになってしまうことなく連携し、それぞれの問題を共有して考えることを進めています。管理者が孤立しないように。一方で、入居者の方やそのご家族とのコミュニケーションをしっかりして安心感を持っていただくことも施設長としての仕事だと思います。さらに外にも目を向けなくてはいけません。近隣の学生さんやボランティアの方を招く活動もしています。近所の方々にとってもっと身近な存在でありたい。ここにそよ風があるっていうことで安心感をもってもらえるといいですね」
幼い頃から頑固で意見を曲げたり他人に同調したりするのが嫌いだったという寺田は、古くから付き合いのある友人たちからは「まさかこんなに長く仕事を続けられるとは……」と驚かれているそうだ。「私自身もそう思います」と笑うが、そんな自己分析とは裏腹に施設の評判は上々。とある雑誌では、東京都の介護施設の総合評価ランキングで1位を獲得した。
日々の仕事の合間に寺田はポケットに手を入れてふと考えることがある。この御守りをくれたお客様が今の私を見たら、「よくやってるね」と褒めてくれるだろうか。
「好きだからやっている仕事ですが、何が目標で何が達成かはまだわからない。ずっと探っている感じです。お客さまによってニーズも満足度も違う。私たちが一人ひとりと向き合ってやるべきことはまだまだたくさんあると思ってます」
寺田が御守りを手放す日は永遠に訪れないのかもしれない。